ベンチャー起業家が絶対に読むべき15冊の本
netgeek 2017年3月3日
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マネーの虎に出ていた社長のうちの何人かはその典型だと言われる。決して能力が高くなくとも、選んだ市場さえよければ成功することがあるのが起業の世界だ。逆に言えば選んだ市場が悪ければどんなに優秀な人が努力しても全ては水泡に帰す。
これから起業しようという若者が先人の事例や経営理論を学ぶことは大いに意味があるだろう。
そこでこの記事ではベンチャーで起業する人にとって必読の書籍をまとめてみた。
1.ホリエモンこと堀江貴文氏の初期の本。
東大在学中にHP制作会社でバイトしていたホリエモンは上司が反りが合わない人に変わったのを機に、バイトを辞め、自分でHP制作のビジネスを始めることにする。社名はオン・ザ・エッヂ。友人を集めて必死に仕事をし、後にライブドアを買収。
六本木ヒルズに住むヒルズ族にまで成り上がった。ホリエモンには苦い思い出がある。上場を目指したとき、会社の初期メンバーが反対し、全員を追い出すことになった。ベンチャーは初期メンバーは無能で、後から入ってくるほど優秀なのかもしれない。痛烈なケーススタディとなる必読の本。
2.サイバーエージェント藤田晋社長の起業録「渋谷ではたらく社長の告白」。
青山学院大学卒業後にインテリジェンスに就職し、営業マンとしてバリバリ働いていた藤田晋氏。結果を出せたことに自信を持ち、すぐに起業を決意する。仲間内で起業の計画を進めるも、そこに宇野康秀社長の甘い誘惑が…。結局、仲間を裏切る道を選んでしまった。
究極の選択に苦悩しながらも合理的な判断を選ぶ藤田晋氏の起業の歴史。サイバーエージェントはいかにして生まれたのか。どうやって大きくなったのか。注目すべきはクリック課金型のウェブ広告システムでホリエモンとタッグを組むところ。まだ有名になる前の2人はひょんなことで繋がっていた。
3.同じく藤田晋社長の起業家。
「渋谷ではたらく社長の告白」の続き。ITバブル崩壊に苦しむ頃、村上ファンドとGMOが手を組み、サイバーエージェントを買収しようとしていた。もう全てを諦めかけたとき、楽天の三木谷浩史社長が救いの手を差し伸べてくれる。
みんなが知るアメブロの裏の努力。サイバーエージェントが上場してから比較的最近までのエピソード。
4.社長失格。
ITが大変注目を集めていた頃、ハイパーネットという会社が倒産した。その後しばらくしてから社長だった板倉雄一郎氏が執筆した書籍。ビル・ゲイツが事業に興味を示し板倉社長に会いに来るが、その後、銀行の態度が一変し、融資するどころかこれまでの融資を返せと言ってくる。
楽観的に事業規模を拡大する一方で肝心のマネタイズに問題があった。システムにも不備があった。会社が倒産する瞬間を内部から目の当たりにできる貴重な一冊。
5.Apple創業者スティーブ・ジョブズの本。
ジョブズは自分の子供たちのために伝記を残したいと考えた。しかし、耳障りのいいことばかり書いてある普通の伝記は読むのが退屈で、それでは出版する意味がない。悪いところも含めて本当にありのままを書いていいと依頼し、この本ができあがった。そしてジョブズは本を一度もチェックすることなくこの世を去った。
世界一の時価総額を達成したAppleは大学を中退したジョブズが創業した会社。プロダクト(商品・サービス)に対して強烈に情熱を燃やすジョブズの仕事姿勢は大変参考になる。どうやって仲間を集めたのか。どうやって優秀な人材を口説いたのか。ジョブズは意外と自分で作業するよりも、優秀な人をスカウトしてきて自分は判断だけをしていた。
一緒に働いた人はジョブズを「ビジョナリー」だと表現する。未来はこうあるべきだというビジョンを持っているのだ。部下にはそのビジョンを実現するための仕事を厳しく要求する。手柄は独り占め。上司としては最低最悪でマネジメントとしては間違いかもしれないが、素晴らしいプロダクトをつくることを第一優先順位とする姿勢から学ぶことは多い。
6.人を動かす。
なかなか読んでも実践するのが難しい本。これを完璧に実践できる人格者はおそらくいないだろう。だが、少しでも良きマネージャーであろうとする姿勢は大事だ。人を動かすにはコツがある。
社長として多くの部下をうまく使うにはどうすればいいのか。どうコミュニケーションをとるのが正解なのか。マネジメントの教科書として非常に秀逸な一冊。
7.一橋大学、沼上幹教授のわかりやすいマーケティング戦略。
マーケティング戦略から経営戦略はこれでバッチリ。他の戦略論の本に手を出さずともこの本に書かれている基礎を徹底して忠実に実践することが大事。そもそもマーケティングが何か説明できる人は少ないだろう。
多くの起業家は自分が欲しいものをつくる。だが、もしも自分のニーズと世間のニーズがずれていたら…?マーケティングは絶対に勉強しておいたほうがいい。経営判断に迷ったときはこの本に答えが書いてある。
8.タリーズ創業者の起業録。
帰国子女だった松田公太氏は銀行を辞めて起業することにする。アメリカで味わったコーヒーは日本の古臭い喫茶店が出すものとは全く違っていた。スタバ、タリーズ、ドトールのようなオシャレなコーヒーチェーン店は今でこそ普通になった。その経緯を紐解くにはこの一冊が最適。
9.ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)のトップが書いた仮説思考。
簡単にいえば、総当たりで可能性を検証していくよりも仮説を立ててそれを検証したほうが要領がいいという話。要約すれば5ページぐらいに収まりそうな本で、あとはけっこう内容を水増しするためにおまけのようなことが書かれているが、仮説思考の重要さを理解するにはこの一冊で決まり。
経営者になるなら仮説思考は絶対に身につけておきたい。学校で教えてくれない要領のいい思考法。
10.イーロン・マスクの起業録。
おそらく今世界で最も注目されている起業家はイーロン・マスクだろう。PayPalに電気自動車、そして今度は宇宙に目を向けている。この男の頭の中はどうなっているんだ!?同じく宇宙開発事業を手がけるホリエモンは「ずいぶんと差をつけられちゃいましたけど…」と珍しく弱音を吐いたことも。
実はジョブズに負けずと劣らず変わった性格の持ち主。メディアに出るときは随分と人当たりが良さそうに見えるがめちゃくちゃ厳しい。
11.「イシューからはじめよ」
Amazonで長きに渡り評価の高い一冊。何が問題なのかを見極めて集中して改善を図ることが大事と説く。特に起業すると何もかもが不十分になる。お金はないし、技術もないし、オフィスもボロいし、社員は無能。そんな中でも本質のみに焦点を当てて集中することが大事だ。
全てが完璧にできる人などいないが、何か一つのことが得意な人なら見つけられる。行動はイシューから始まるのだ。
12.一橋大学・楠木建教授の戦略論の本。
世の秀逸な戦略事例を紹介している評価の高い本。特に注目すべきは稀にある「一時点では理解されない経営判断」をスルーパスに例えて説明したところ。誰もいないところにボールが蹴られたのに後から仲間が追いついて合わせるようにゴールを決める。
経営者の役割はまさにスルーパスを蹴ることなのかもしれない。少し先のところに目標を定め、仲間を誘導する。周囲の人物は「あんなことして何やってんだあいつ?」と疑いの目を向けるが、時間が経ってからようやく理解される。
今でこそスタバでMacBookを使っていると格好いいと言われる時代になったが、昔は「パソコンオタク」という言葉があったように、パソコンはひどくマニアックなものだった。空を飛ぼうとしたライト兄弟は何度も失敗し、白い目で見られた。ベンチャーに果敢に挑戦する者は常に周囲から理解されないものだ。
13.フリー。
地理的制約がないインターネット上はとにかく一気に集客することが可能なので無料で人を集めて一部有料にするビジネスモデルがうまくいきやすい。あえて無料にするという選択がうまくいっている事例を特集した本。
ITビジネスをする人は特に読み込んでおきたい。直感の判断力というのは類似の成功事例をどれだけ頭に入れたかで磨かれるのだ。
14.AppleのCDO(最高デザイン責任者)、ジョナサン・アイブの本。
スティーブ・ジョブズの伝記と同じテイストの本。Mac、MacBook、iPhoneをデザインしたジョナサン・アイブは学生のときからコンクールの賞を総なめにしていた。ジョナサン・アイブは、デザインとはただプロダクトに皮を貼り付けるだけではなく、機能と一体化するものだと考えている。
銀行の新しいATMを考えるコンクールに、アイブは地下から丸い筒が伸びているだけのATMを提案した。地下にお金が収納されており、筒の中をお金が上がってくる仕組みだ。治安の悪い海外では外にあるATMは必ず破壊される。その問題をまさにアイブはデザインで解決した。
ジョブズに認められ親友になったアイブのデザイン哲学はセンスを磨くのに参考になる。当初ジョブズは企業や商品には色が必要だと考えていた(イメージの薄い白はダメ)。それを覆してAppleに白というイメージを植え付けたのはこの男だ。
15.マッキンゼー出身DeNA南場会長の本。
コンサル時代とは違い、いざ自分が起業すると苦戦することばかりだった。それでも事業を成功させ、ベンチャー企業を大きくすることに成功する。南場会長はこの本で多くのファンを獲得したように思える。
コンサルといえば格好いい姿ばかり見せるイメージがあるが、南場会長は正直に格好悪いところを明かしている。
以上15冊。どれも重要な本なので選り好みせず全て読破してほしい。
ポイントは実務家と学者の知見をバランス良く取り入れること。理論と実務をしっかりと学びとった後は自分のプロダクトを磨くことに専念しよう。振り返れば成功した起業家は皆、素晴らしいプロダクトをつくることに専念していた。お金は後からついてくる。
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