「スマホ認知症が若者の間で急増中」←そんなものはないと複数の専門家が反論
netgeek 2018年3月2日
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まずは放送の様子からみてほしい。
“スマホ認知症”20代の物忘れ外来患者も
いま、働き盛り世代の人に「スマホ認知症」の症状を持った人が増えているという。スマホと認知症の関係とは?https://t.co/CisJ1FSIBL#スマホ #認知症 #物忘れ #うつ病 pic.twitter.com/p8WJfOa3fi— NTV NEWS24 (@news24ntv) 2018年2月28日
番組ではまず「スマホ認知症」という強烈なインパクトをもつ言葉を紹介する。スマホを使っている若者にとっては不安になってしまう内容だ。
物忘れ外来を専門とするクリニックの奥村歩医師はここ最近、若者の受診が多くなっていると指摘し、従来、高齢者がなるものだった認知症が若者に増え始めたとコメントする。
そして、その原因はスマホにあるのだと話を繋げる。本来、脳は情報をインプットしてから処理するのだが、スマホはインプットばかりになるので脳が疲れてしまう。
その結果、通常の健康状態には起こり得ない症状が現れるのだという。
一見すると鬱病や認知症と同じだが、原因はスマホなので「スマホ認知症」と名付けた。※まだ正式な病名ではない
スマホ認知症を治すために必要なのはスマホを使わないぼんやりする時間をとること。ご飯を食べるとき、入浴、寝る前など、脳を休める時間をつくることが大事だ。
この番組は日テレが制作し、Yahooニュースが拡散していた。だが、すぐにソーシャルメディアで医療関係者が内容にクレームをつけ始める。指摘をまとめると以下のようなものだ。
・「あるクリニックでは若者の受診が増えている」→偶然では?複数の医療機関で調べるべき。今のところ、あまり聞いたことがない話なので眉唾もの。
※医療については因果関係をしっかり調べないと大変なことになるので慎重に
・仮に若年層の物忘れが増えているとしてもスマホが原因かは分からない。仕事のストレス、過労など色々考えられる。
・認知症とうつ病を混同している
・1人の医師が言っているだけ
スマホを使う時間が長いと認知症になるというのはにわかには信じがたい。情報のインプットという意味ではテレビやラジオ、読書も同じなのに…。一昔前は「ゲームをするとゲーム脳になって頭が悪くなる」と言われたこともあった。だが今ではむしろ反射神経や論理的思考力を鍛えるために役に立つと言われるようにもなっている。他にも「漫画の読み過ぎは…」「テレビの見すぎは…」と言われたが、何ら医学的根拠はない。
時を同じくして日本医師会、小児科医会はスマホ使用に警鐘を鳴らすポスターを掲載している。
だがこちらもツッコミどころが多く、すでに複数の人物が反論を行っている。
参考:医師会「スマホ注意ポスター」は問題だらけだ(東洋経済)
過去を振り返れば、因果関係があやふやなまま間違った知識が常識として広まってしまうことは多々あった。例えば子育ての常識は昔と今とでは大きく変わっているのだ。
参考:昔と今の子育て論はここまで違う!さいたま市発行の「孫育てのための祖父母手帳」が秀逸
果たして本当にスマホの使い過ぎで認知症になるのか?偶然にも奥村歩医師は2017年7月にスマホ認知症をテーマにした本を出版しており、広告代理店が絡んでブームを仕掛けようとしている可能性もあると疑われる。
しばらく前に流行った「メタボ」という言葉はその典型だった。「スマホ認知症」も同じ手法の使い回しなのかもしれない。
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