NHKが加計学園の新流出文書を公開するも解釈を間違えている。正しくはこうだ。
netgeek 2017年6月20日
|
まずはNHKの報道をざっと紹介したい。
▼「個人フォルダに保存されていた新文書を独占入手した。これは文部科学省の10名ほどに送られていたもの」※書式を見るに課長補佐の牧野美穂氏がつくった上司報告用のメモだと思われる。
▼今回入手した新文書は「総理のご意向」と書かれた文書より後につくられたもの。
▼新文書はこちら。萩生田副長官の発言録だ。重要部分は赤線。「官邸は絶対やると言っている」「総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた」「加計学園事務局長を行かせる」などと安倍総理の指示ということになっている。
▼萩生田副長官はこうした言葉で獣医学部新設に反対する文部科学省を説得しようとしていた。
▼文部科学省としては内閣府が安倍総理の力を使って不公平に加計学園を優遇したと解釈し怒りを感じた(と言っても天下り先を壊されるのが不都合なだけだが)。
ということで、クローズアップ現代の紹介の仕方では、やはり安倍総理が加計学園の獣医学部新設を直接指示したという見方ができる。
だがこれは明らかに間違っている。これより前に流出した文書にある「国家戦略特区諮問会議決定という形にすれば総理からの指示に見えるのではないか」という一文と矛盾することになるからだ。この一文は国家戦略特区は安倍総理の直接指揮下にあるが、獣医学部新設は直接指揮下にないということを意味している。
クローズアップ現代の担当者はおそらく編集途中でこの矛盾に気づいたに違いない。それでも都合の悪い部分を見なかったことにして勝手にストーリーを作り上げた。
そもそも問題の論点は「安倍総理が加計学園を不公平に優遇したかどうか」ということ。今回、流出した文書に書かれているのは「加計学園に内定が決まった後に、安倍総理がスピード感をもってプロジェクトを進めるよう指示している」というものであり、これは加計学園の選出プロセスに安倍総理が関与したという証拠になっていない。
ここで改めて正しい経緯を簡潔にまとめておきたい。
(1)安倍総理が規制改革のために国家戦略特区をつくると決める。
(2)内閣府は国家戦略特区の一環として獣医学部の新設を決める(安倍総理は不関与)。
(3)ただし獣医学部新設は文部科学省の管轄で、説得が難しい。文部科学省は天下り利権で甘い汁を吸っており、新しい学校ができると利権構造が壊れてしまう。
(4)内閣府担当者の作戦「安倍総理が議長の戦略特区会議で獣医学部新設を発表して総理からの指示に見せかけよう。これで文部科学省の担当者は逆らえないはず」
(5)内部関係者が文部科学省の上司に作戦をバラすメモを送る。上司は文章を読み間違えて(国家戦略特区ではなく)獣医学部新設が「総理のご意向」なのだと解釈する。だったら逆らえない…。
(6)何はともあれ作戦成功。獣医学部新設が決まったので今度は学校選び。加計学園が最も適切だと内定を出す。※後に加戸守行前知事が「昔から加計学園が一番良い提案をし続けていた」と証言しているので正しい選出だと思われる。
(7)内閣府の担当者が安倍総理に報告「国家戦略特区の一環として、加計学園の獣医学部新設を進めることになりました」。安倍総理「分かった。スピード感をもって進めるように」。
(8)農林水産省は了承。だがここにきて文部科学省がごね始める。
(9)内閣府担当者が安倍総理に「文部科学省が抵抗している」と報告。安倍総理は「国家戦略特区プロジェクトは絶対に実行する。君たちが加計学園の獣医学部新設って決めたんだろ?ちゃんとやりきらないと。そしたら締切を設けて…」。
(10)内閣府での打ち合わせにて萩生田副長官「文部科学省だけが怖気づいているが官邸は絶対にやると言っている。総理は平成30年4月開学とおしりを切っていた。文部科学省は何を問題と考えているのか?問題があるなら加計学園事務局長を行かせて改善に向けた話し合いをさせる」
(11)この萩生田副長官の発言について、牧野美穂氏が文部科学省の上司に報告メモを送る。
(12)一連の報告メモを見た文部科学省の人間は「安倍総理が加計学園のために獣医学部新設を決め、不公平に選んだ。加計理事長が友人だから総理のご意向、官邸の最高レベルで決まった」と誤解。※正確には戦略特区のみが安倍総理のご意向で、獣医学部新設の決定プロセスには不関与だった
(13)文部科学省の関係者が文書をマスコミにリークする。
こうして流れをまとめてみると、今回NHKが公開した文書はむしろ以前netgeekが唱えたストーリーの裏付けを強化するものになったことが分かる。
参考:加計学園問題「総理のご意向」の意味がついに解明。伝言ゲームで誤解が広まった
そもそも、もしも加計学園の獣医学部新設が総理の直接指示だったのであれば、内閣府の担当者は文部科学省とのやりとりにここまで苦労することはなかったのだ。「安倍総理の直接指示です」と一言伝えるだけで意見が通ったはずだった。
だが、そうではなく権限の弱い担当者レベルで対等に戦っていたから、総理からの指示に見せかける作戦などが練られていた。
NHKの解釈では、はじめに流出した文書と今回流出した文書の矛盾点が説明しきれておらず、整合性が取れていない。重要なのは、安倍総理は加計学園の選出プロセスには関与しておらず、決定してから指示を出したという点だ。
全ての真実を知っており、最も説得力のある証言ができるのはメモを作成した牧野美穂氏のみ。
だが、文部科学省に所属する牧野美穂氏はその立場上、都合の悪い発言ができず、どう証言すべきか困り果てている。「記憶がない」という証言は「真実は都合が悪いので語れない」ということを意味する。
記憶曖昧、全容解明はほど遠く 文書作成者「発言真意は不明」
調査対象となった19文書のうち14文書が確認されたが、大半を作成したとみられる職員の記憶は曖昧で、全容解明にはほど遠い結果となった。(中略)
作成したとされる文科省の担当課長補佐は前回調査で「記憶がない」と答えたが、今回は消極的に認めた。ただ、「発言の真意はわからない」とし、あくまで自らの受け止めとの認識を示した。(中略)
調査に対して「当時作ったメモだろう」「ただし発言者の真意は分からない」と答えるにとどまったという。
http://www.sankei.com/life/news/170615/lif1706150062-n1.html
仮に、加計学園選出に「総理のご意向」があったのなら牧野美穂氏ははっきりとそう証言するはずなのに、覚えていないふりをして明言を避けているのは都合が悪いからであろう。これが全ての答えだ。
NHKは流出した文書の一部分のみを捉え、時系列の中で情報を正しく整理する作業を怠ったがゆえに誤った理解をしてしまった。安倍総理が指示を出したのは、現場レベルの担当者が加計学園に内定を出した後であり、選出プロセスには一切関わっていない。
Comments (12)