ホリエモンチャンネルで見えた堀江貴文の優秀な経営手腕
netgeek 2013年9月27日
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ホリエモンこと堀江貴文氏のYOUTUBE番組「ホリエモンチャンネル」が面白いと話題になっている。動画ではメルマガの読者が起業や経営戦略、会社での人間関係の悩みなどビジネス上で起きている問題をメールで相談し、それに対して堀江氏がアドバイスを送るという構成になっている。
ホリエモンチャンネルは2013/9/3に第一弾の「ホリエモンのQ & A vol.1 」という名前で初めて動画が投稿された。その動画がこちら。
アシスタントに寺田有希が起用されており、ビジネスの話題中心とはいえ画面に華やかさがある。ターゲットをビジネスマンに絞っているのか、コンテンツの方向性がはっきりしているため内容が面白く、短い動画が頻繁にアップされるので、ついつい見てしまう。
そしてこの動画配信を見ていて、堀江貴文氏特有の3つの秀逸さに気付くことができた。第1に「人を巻き込む」とことに優れている。お気づきになっただろうか?動画の冒頭に流れるボイスはあのヒカキンが担当している。コメント欄で「最初のOPヒカキン?」と書かれた後、ヒカキン本人が自身のアカウントで堀江氏にお礼を書き込んだので本人ということが確定した。
優秀な人は何でもかんでも自分でやってしまいがちだが、堀江氏は自分が担当するところと他人に任せるところをきっちり分けている。自分の構想に周囲の人間を巻き込んで仕事を任せることで大きな仕事をやっている。
第2に新しいことに挑戦する姿勢だ。堀江氏は1972年10月29日で、もう40歳。貯金はもう十分すぎるほどあるだろうから、守りに入ってもよさそうなものだが、その生きざまは攻め一辺倒だ。こんなにアグレッシブな40歳がどこにいようか。楽に生きることなんて全く頭にないようだ。次から次へと新しいことに挑戦していく様子はさすがオンザエッヂを創業し、ライブドアを大きくした堀江貴文だと言えよう。日本では断トツで優秀なイノベーターなのではないだろうか。
イノベーターと言えば、ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンが書いた書籍にイノベーションのジレンマという本がある。英語ではThe Innovator’s Dilemmaとなっており、時代の最先端で革命を起こすイノベーターのことを中心にそこで起こる問題について言及しており、大ヒット作となった。概要は以下のようになっている。
大きな企業においては、規模の大きい既存事業の前に現れる新興の事業や技術は小さく、魅力なく映るだけでなく、既存の事業をカニバリズムによって破壊する危険があるため、新興市場への参入が遅れる傾向にある。優れた特色を持つ商品を持つがゆえに、その特色を改良する事のみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かず、既存の商品より劣るが新たな特色を持つ商品を売り出し始めた新興企業に大きく遅れを取ってしまうのである。
例えば、PCメーカーは携帯電話でインターネットができるようになっても、「携帯でできることなんて限られている。あんなものは子供のおもちゃだ。うちにはPCがあるから優れたPCをつくっておけばそれでいいのだ」と新しくでてきたものをバカにする。社内の一部の人間がその可能性に気付いたとしても導入気は市場規模も小さいので会社上層部からもGOサインがでない。その後、成長期になってからPCを脅かすほどの市場規模となってようやくビジネスチャンスに気付いてももう遅いということである。
発生の経緯としては次のような流れとなる。
- 優良企業は顧客のニーズに応えて従来製品の改良を進め、ニーズのないアイデアについては切り捨てる。イノベーションには従来製品の改良を進める持続的イノベーションと、従来製品の価値を破壊するかもしれない全く新しい価値を生み出す破壊的イノベーションがあるが、優良企業は持続的イノベーションのプロセスで自社の事業を成り立たせており、破壊的イノベーションを軽視する。
- 優良企業の持続的イノベーションの成果はある段階で顧客のニーズを超えてしまい、顧客はそれ以降においてそうした成果以外の側面に目を向け始め、破壊的イノベーションの存在が無視できない力を持つようになる。
- 他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損してしまい、優良企業は自社の地位を失ってしまう。
このイノベーションのジレンマを解決する手立てとして、新しく出てきた破壊的な技術を積極的に取り入れる戦略が考えられる。例えばサイバーエージェントは若手に子会社の社長を任せ、新しいことにどんどん挑戦する社風をつくっており、既存事業とのカニバリなど一切気にしていない。ホリエモンもこれと同じ戦略思考を実践していると言えよう。やろうと思えば視聴率を一気に稼げるTVでできるのに、あえてYOUTUBEを選んだのは、将来性があると見抜いたからではないか。
幸いYOUTUBEではアフィリエイトプログラムが始まっており、個人でも稼げる市場が提供されている。グーグルが買収したときは赤字だったが、日々成長を遂げて今は黒字化しているという。その儲けの一部をユーザーにも還元して、さらなるコンテンツの拡充を狙う戦略であろう。ブログなどの普及で一般の人が情報発信しやすくなり、国民総メディア化と言われる時代が到来した。今後はさらに大手メディアが寡占・独占的にコンテンツを支配するのではなく、個人がフリーとして面白いコンテンツを提供していく時代に移っていくだろう。ホリエモンはその時代の最先端を走っている。
3つ目の秀逸さは謙虚さだ。ホリエモンと言えば、権力に逆らい、スーツを着ないでTシャツジーパンでふてぶてしく喋るというイメージがあるが、実はそうではないようだ。それは周囲の人間もそう証言している。堀江氏の側近だった宮内亮治氏も「 虚構 堀江と私とライブドア」で堀江には2つの顔があったと書いている。マスコミに取り上げられるのは態度の悪さばかりだったが、その反面、実は愛くるしいいじられキャラだったというのだ。「また太ったんじゃない」などと言われても堀江氏は決して怒らないで「そうかな~」と言うという。
さらにライブドアの監査を担当していた公認会計士の田中真一氏が書いた「ライブドア監査人の告白」では堀江さんはTVとは違い、謙虚で素直なひとだった書かれている。財務担当者が反発し監査に非協力的な態度をとる中、社内の監査体制が不十分だと指摘を堀江氏は素直に受けいれ、すぐに自身のブログで人事募集をかけてくれたという。「この人なら仕事がうまくいく。希望が見えた」と書いている。
今回、その性格がコメント欄でも垣間見ることができる。「ホリエモンのQ&A vol.4」で動画の視聴者が「サムネ画像が分かりにくい、タイトルが見にくい」と書き込んだところ、何と堀江氏が即座に返答。
たくさん書き込まれるコメントをいちいちチェックして返信までしてるのは驚きだ。その上、これを機にサムネとタイトルに変更が加えられた。変化の過程を紹介しよう。
第1回 タイトルは「ホリエモンのQ&A vol1」という検索に不利なものとなっており、読者の興味をひかない。サムネ画像に表示されるタイトルの文字「Facebookアプリのマネタイズについて」は小さくてすごく見にくい。
第4回 相変わらずこのスタイル。ここでコメント欄に見にくいと書き込まれる。
第5回 背景を青色に変更!文字を大きくし、タイルもホリエモンのQ&Aだけでなく、「シルクスクリーンの印刷会社の売り上げ…」と工夫している。
その後このスタイルが続き…
第11回目からは目に優しいように原色に白色を混ぜた色に変更。11回目まで時間表示にかぶっていた寺田有希さんの顔が12回目からは左に移動になっている。
この向上心は素晴らしい。今の日本人経営者にここまで真摯に他人の意見に耳を傾け、汗をかき、泥臭い仕事をする人間がいるだろうか。
ホリエモンチャンネルは持続的イノベーションを続けている。あと10年もすれば、ネットの動画コンテンツがTV局を淘汰する革命が起こるのではないだろうか。今のテレビ番組には面白いYOUTUBE動画を紹介するものがある。これはTVにしがみつく老害の苦肉の策ではないか。目指すは破壊的イノベーションだ。新しい時代をつくろう。
2013/9/27 11:01追記
堀江さんが本記事をリツイートしてくれました!リスケンという方がこの記事についてツイートしたのをリツイートしてくださってようです。リスケンさん、堀江さんありがとうございます!
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