「すしざんまいの社長がソマリアの海賊を壊滅させた武勇伝はインチキ」 ノンフィクション作家が指摘
netgeek 2016年1月22日
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もともと木村清社長はハーバービジネスオンラインの取材に対して海賊にマグロ漁のやり方を教えることで年間300件あった被害を0件にまでしたと豪語していた。
参考:ソマリアの海賊に「やり方教えてやるからお前ら漁師になれ」と言って全滅させたすしざんまいの社長がノーベル平和賞ものだと話題に
記事は1/18に公開され、あまりにもすごいエピソードだとして瞬く間にネット上で拡散。ノーベル平和賞をもらってもおかしくないという声が高まり、日本人の偉業を誇らしげに感じる人が多かった。
しかし、これに反論したのがノンフィクション作家の高野秀行氏だ。海賊が激減したのは事実とはいえ、それは別の理由があるという。
ソマリの海賊がこの2,3年で激減したのは、一般の船舶が武装護衛をつけるようになったことがいちばん大きい。従来は丸腰だったから襲われるのは無理もなかった。ところが2,3人でも護衛をつけると大違い。なにしろ通行する船はでかい。海賊は下からはしごをかけて上がっていかねばならない。それを上から銃で撃てば、海賊は手も足も出ないのだ。
2番目の理由は、自衛隊を含む各国の海軍が警備を行っていることだろう。 まあ、仕事がなくなった海賊の一部はすしざんまいで助かっているかもしれないが
ソマリアの海賊は9割方が事実上の独立国家「プントランド」から出陣していた。海賊の原因が「貧困」だと言う人が昔も今もいるが、それも単なる固定観念にすぎない。
貧困者が海賊をやるなら、世界中の海で海賊が跋扈していることになる。そしてそんなことは全然起きていない。
他の大多数の貧しい国でも海賊がいないのは、そこの政府が取り締まるからだ。そして、なぜプントランドに海賊がわんさかいたのかというと、プントランド政府が黙認していた、もっと正確にいうなら利益を共有していたからだ。
こうして反論を読んでみれば自衛武装と政府の力で海賊が減ったという話のほうが信憑性がある。また、ソマリアの海賊は実はプントランドの人間で政府が黙認していたという裏話も興味深く、やけに説得力がある説ではないか。
ここで改めて木村社長のインタビュー記事を読み返してみると、「国の援助は上滑りで役に立っていない。海賊被害が0件になったのはうちのおかげ」と主張していることが分かった。
いろんな国や国際機関も援助をやっていますが、どれも上滑りのことばかりであまり役に立っていないことも少なくありません。相手の視線に立って、相手の悩みに気がついてあげることが必要なんです。ソマリア沖じゃ一時は年間300件、海賊による被害があったそうですが、うちが行くようになって、この3年間の海賊の被害はゼロだと聞いています。よくやってくれたと、ジブチ政府から勲章までいただきました。
つまり、高野秀行氏の見方とは真っ向から対立する考え方だ。一体どちらの話が本当なのだろうか。ネット上は木村社長に懐疑的な人が多く、第三者として客観的な立場で物事を捉えた高野秀行氏の説を支持する声のほうが多い。高野秀行氏は2013年に「謎の独立国家ソマリランド」で第35回講談社ノンフィクション賞を受賞しているだけにその信憑性はかなり高いと考えて間違いない。
では木村社長がジブチ政府から勲章をもらったと主張しているのは何なのか。
それは多額の設備投資をしたことで感謝されただけと指摘する声も少なくない。マグロ漁を始めるにあたっては漁船と巨大な冷蔵倉庫が必要になるのではじめに億単位の金が一気に動く。その後の定期的な魚の買い取りも経済を活性化させる。地域経済に貢献したという意味での表彰であり、海賊の減少とは関係ないという可能性は否定しきれない。
また、何か詳しい事情を知っていそうなTwitterユーザーは、すしざんまいの実態について面白い表現をしていた。「すしざんまいは海賊国家プントランドと手を組んでマグロを密輸している状態なので、すしざんまいも海賊の一味になっただけ」。
大絶賛された人物が一夜にしてここまで形勢逆転してしまうのは珍しい。また、すしざんまいについては元従業員が「ここはブラック企業。社長を崇め称えないといけない宗教みたいな会社で、社員は必死に社長のご機嫌取りをしている」などという告発も多数聞かれる。すしざんまいの武勇伝はガセざんまいだったのか。木村社長の反論を待ちたい。
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