イノベーションのジレンマで有名なクレイトン・クリステンセン教授「バイラルメディアはゴミじゃないぜ!既存メディアはその脅威に震え上がるべきだ」
netgeek 2014年10月17日
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参考:Disruption guru Clay Christensen says incumbent media players are making a classic mistake
メディアを運営する企業は新参者を軽視する典型的なミスを犯している。このままだと潰れるぞ。
著書、「イノベーションのジレンマ(The Innovator’s Dilemma)」で技術の破壊的イノベーションが既存事業を追いやると鋭く分析したクレイトン・クリステンセン教授は、先日開かれたパネルセッションにてこんな発言をした。「バイラルメディアをバカにしている既存のマスメディアは過去に電報産業や自動車産業がやったのと同じミスを犯しつつある。自分たちのシェアを奪う脅威としてみるべきだ」。
スマホがPCのシェアを奪いつつあることを思い出して欲しい。もともとはしょぼい携帯電話がここまで進化したのだ。
産業の既存プレイヤーは周囲で破壊的イノベーションが起きていても依然として自分たちの仕事のやり方を変えず、必要な変化を起こすことを怠る。新しく生まれた破壊的イノベーションで勝負する新参者はローエンドなものを生み出すので、往々にして自分たちが注意するほどの存在ではないと油断してしまうのだ。
古参企業は既存のものをよりよくする持続的イノベーションは得意だが、全く新しいものを生み出す破壊的イノベーション、特に高価で複雑だったものをシンプルにすることは極めて苦手な傾向にある。かつて電報産業は電話というものを軽視してしまい失敗した。
Huffington PostやBuzzFeedといったバイラルメディアは質の低い記事しか提供してこなかったが、今や調査・報道にまで乗り出して着実に成長している。
既存メディアは将来、消費者のニーズを超えてしまい(すでに超えているかもしれない)、バイラルメディアに置き換わるはずだ。ちなみに雑誌のForbesはオンラインメディアの使い方がうまく、伝統的なメディアであるFortuneとNewsweekを圧倒している。
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クリステンセン教授は日本のバイラルメディア市場には言及しなかったものの、すでに日本でも伝統的マスメディアが脅威にさらされていることは確かであろう。現状では「ゴミでしかない」とコンテンツがバカにされているバイラルメディアだが、今後は記事の質を高め、急成長するサイトが出てくるものと思われる。
現在LINE社内ではバイラルメディアをめぐって意見が真っ向から対立。大論争が巻き起こっている。
LINE NEWSやライブドアブログなどを運営するLINE株式会社では現在、社内でバイラルメディアの是非をめぐって意見が割れている様子。R25やWIRED.jpに携わった経験のある上級執行役員の田端信太郎はNewsPicksの取材に対して「バイラルメディアは二重の意味でダサい」と猛烈に批判した。ただこの意見はあくまで現時点のバイラルメディアの評価にとどまっており、時間的展開の中で今後どこまで成長していくかまで見据えたものではなかった。
これに対し、ライブドアブログを担当するウェブディレクター佐々木大輔(執行役員)はブログの記事「田端も徳力もよくわかってない! バイラルメディアを実践してわかった、従来メディアとの具体的な違いを教えます」にて自身が実際にバイラルメディアを運営してみて将来性を感じたと真っ向から対立意見をぶつけた。
果たして日本のバイラルメディアは消費者のローエンドのニーズを満たすところまで、そして将来的にはハイエンドまで到達して伝統的マスメディアを駆逐するところまで成長するのだろうか。
netgeekはすでに現状の「ゴミだ」、「ゴミじゃない」などと記事の質を問うばかりの議論にうんざりしつつある。今後は議論に時間軸を加えて「5年後はこうなっている、10年後はこうなっている」という、より具体的な未来を見据えた議論が展開されてることを期待したい。