落書きに報酬をあげてからゼロにすると落書き被害がなくなる。行動経済学を解説したヘンテコノミクス
netgeek 2018年1月26日
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アベノミクス関連の本かと思いきや、行動経済学を漫画で分かりやすく解説した良書。
▼表紙。コミカルなイラストがいい。
▼壁の落書きに困っていたおじいさん。消してもまた近所の小学生に書かれるイタチごっこ。
▼ある日、落書きを書く度にお小遣いをあげることにした。
▼そして急にお小遣いをなしにすると、小学生たちは一気にやる気を失い、落書きはなくなった。
出典:https://twitter.com/kemy014/status/956371489640497152
これは仕事にも通ずる話だ。誰もが「仕事の報酬は成果報酬が最適」と思いがちだが、実は成果報酬は長期的に見て不合理だという研究結果がある。報酬は固定にしておきつつ、その他のやりがいや感謝の言葉、承認欲求を満たすことでインセンティブをつくるほうが実はパフォーマンスは高くなるという話だ。
事業の成長期に成果報酬を導入するとその後、成熟期や衰退期に入ったときに必然的に報酬が下がり、モチベーションが激減する。つまり企業としては外発的動機をつくるよりも内発的動機づけを促すほうが正しいというのが最近の研究者の間ではコンセンサスになりつつある。
落書きを楽しんでいた小学生を社員、おじいさんを社長と考えれば分かりやすいだろう。変に成果報酬システムをつくるよりも、社員たちが楽しんで働く環境を整えるほうが大事だった。
ヘンテコノミクスは雑誌「BRUTUS」に掲載されていた人気漫画。この他にも実例から学べるケースが分かりやすく紹介されている。
・とある飲食店で新メニューが売れなかったのは、ラインナップの真ん中を選ぶ心理が働くから
・保育園でお迎えの時刻を守らない母親に罰金を課すと、逆の結果になった
ヘンテコノミクスは現在、Amazonにおいてカテゴリー1位でベストセラーを記録中でレビューの評価も高い。経済学では人間は合理的な判断を下すという前提で理論がつくられるが、それでは説明しきれない現象が多々起きる。人間は意外と不合理だということを教えてくれるのが行動経済学の面白いところだ。